新しい発見をうながす仮説思考を身に着ける

仮説思考とは、手元にある限られた情報や知識をもとに仮説を立てながら、解決策を考えて実行し、必要に応じて検証する考え方、つまり思考のスキルである。

変化が激しく、不確実なことの多いビジネスや投資で、最も適応できる利益を生み出す源泉となる思考といえるだろう。

変化が激しい場合、1つの結論にこだわっていては融通に欠けてしまい、その変化に対応することができない。そこで、仮説をもとに状況に応じて修正しながら行動するという、柔軟な考え方が必要になってくる。

また、不確実なことの多い場合、データや情報を集めてもすぐにそれが陳腐化したり、情報不足になってしまったりするおそれがある。そのときに「正しい答えが出てこない」などと結論を出すのをあきらめてしまっては、なにも行動に移すことができなくなってしまう。

それを乗り越えて成果をだすためには仮説を立てて、それに沿って行動することで、よりスピーディーな対応が可能になる。

正しい投資プロセスを構築する上で大切なのは、いつ、どの時点でも行動できるように準備しておくこと。そのために、どう行動するのが適切かを判断する材料となるものを、仮の形でも持っておかなければならない。それが仮説である。

ある特定の考え方ではなく、繰り返し仮説を立て、必要に応じて検証しながら、行動を起こす一連の思考・行動プロセスを仮説思考と呼ぶ。

 

仮説は「次にとるべき行動を決めるため」に立てる

仮説とは「仮の答え」だと言うと、「なぜわざわざ仮説を立てる必要があるのか」と感じる人もいるだろう。「仮の答えしかわからないなら、仮説など立てずにそのまま行動すればよいではないか」と。

しかし、行動するときには、何か基準がなければ動くことができない。たとえば、「今日はあの会社の株を購入しよう」と考えて購入したとする。こうした行動も「あの会社の株を購入するタイミングは今日がよい」という仮説が頭の中にあってはじめて可能となる。

これは単なる思いつきではなく「過去の経験からそろそろ新しい発表がある頃だ」「株価の動きが暴騰した時と似ている」などの裏づけとなるものがあってこその判断である。

もちろん、この仮説をもとに行動すれば絶対にうまくいくという保証はない。しかし、この仮説があれば株式や馬券の購入タイミングをベストに近づけることができる。

仮説を立てる意味が見えてきたのではないだろうか。仮説は、次にとるべき行動を決めるために立てるのである。

今の投資では、判断や行動のスピードがますます求められるようになっていく。変化が激しくなると、長期的な目標に着実に取り組むだけではなく、変化に応じて目標そのものも柔軟に変えながら、その場その場で最適な答えを出していく必要が出てくる。

そのようなとき、確実な結論が出るまでじっくりと情報を集めるのでは遅すぎる。手元にある情報からその時点での仮説を立てて行動に移し、新たな情報に沿って仮説を、そして行動を修正していくほうがより効果的な結果が期待できる。

この思考と行動のサイクルを速く、効果的に回す手法として仮説思考は、特に変化の激しい競馬において勝ち組と負け組を分けるクリティカルなスキルと言えるだろう。

私は予想が上手いとは言えないが、仮説思考のスキルを高めたことで狙い所や勝負所で十分な回収を可能することができている。

このスキルを磨けば自分なりの勝負すべきポイントが明らかにできるため、ぜひ習得してほしい。

 

仮説とは「現時点でのベストの結論」

仮説とは「入手できる情報や知識から導き出された、現時点でのベストの結論」のこと。よって「別の結論を出すために必要な情報が欠けている場合に、仮置きするもの」である“仮定”とは異なる。仮定では、次の行動につながらない。

仮説は、矛盾しているように見える
・確実とはいえないもの
・ベストを尽くして考えたもの

という2つのポイントが併存したものといえる。

確実な結論を出すために必要なデータを集めていては、いくら時間があっても足りることがない。それよりも、現時点で手元にあるデータや情報から導き出されたことを有効に活用するほうがより現実的である。

ただし、それでは確実な結論とはいえないので、仮説は「確実とはいえないもの」である。

一方で、思いつきで出したアイデアやひらめきは、仮説ではない。その程度のものをもとに行動するのは危険でしかない。

行動の指針となる仮説といえるためには、現時点で手元にある情報や知識を総動員して行う必要がある。その意味で、仮説思考は「ベストを尽くして考え抜いたもの」と言えるだろう。

 

「精度の高い仮説」が良い仮説

ここまで仮説思考、仮説について説明してきたが「このような考え方なら、すでに仕事で実践している」と感じられたかたもいるかもしれない。

たしかに、私たちが日常的に出している結論のほとんどは仮説だといえる。さらに、それをもとに行動し、状況が変われば結論を修正するといったことも自然に行われていることかもしれない。

仮説思考をしていくにあたって特に注意したいことは、仮説や行動の精度である。

すなわち、漠然としたレベルの仮説ではなく、誰もが具体的にどのような行動をすればよいかを突き詰めてイメージできる仮説でなければならない。

特に株式や競馬のような複雑なシステムを持つ対象には精度の高さで成績が決まると言っても過言ではない。具体的にどう行動すべきか分かるレベルにまで仮説を昇華させてこそ実践で利用できるようになる。

つまり、利益となる行動のベース仮説が具体的であるのなら、行動の精度は上がり確かな利益をもたらすようになる。

  • 仮説は具体的なほど精度が上がる
  • 仮説の精度が上がれば、行動の精度も上がる

この馬は休み明けでは走らないという仮説を立てれば、その裏付けを取るためにできることを考え行動に移す。みんなの投資競馬ならエージェントが馬体からデキを判断するので精度が高く馬券に使うことができる。その効果は体験しているはずで言うまでもないだろう。

ただし、的中率100%の仮説は存在しない。あらかじめハズレるリスクを計算しておくことも必要である。

株式、競馬で確実に分かることはあまりないからこそ仮説思考が役立つシーンは多い。次項で書く【自動思考】と合わせてトレーニング・実践していくことで自分だけの利益となるシグナルや僥倖を感じられるようになるはずだ。

確かなスキルが生み出すカンという名のシグナルは後天的な努力で身につけられる。このスキルを修練により獲得すれば、よりよい投資ライフの礎となるだろう。

圧倒的な利益は、外からもたらされるのではない。圧倒的な実績を残した投資家たちほど、自分の内側から大きな利益が生まれることを知っている。

アメリカ有数の投資家であるウォーレン・バフェットは、師と仰ぐベンジャミン・グレアムの投資理論を継承してきた。しかし、その全てに賛同するのではなく、自分の考え方に合わないものは捨て、自分の能力を最大限に発揮できるようにカスタマイズしている。

ちょっとしたことでは揺らがない確固たる理論ができあがれば、それはいずれ信念となり投資行動の原則となるだろう。そうなれば負けに動揺することなく能力を発揮し続けられるようになるはずだ。