
米国の有名な精神科医ダニエル・エイメン博士は、「人間が考えることの95%は毎日同じことの繰り返し」だと言う。
誰にもその人なりの思考の癖があり、また多くの人に共通する癖もあるそうだ。なにかの出来事に対して瞬間的に浮かぶ考え=自動思考が災いして、状況に対する歪んだ認知が心身に問題を起こすことは珍しくないとも言っている。
しかし、同じ思考を繰り返すのは生き物として必要なことであった。私たちは生体を維持するために〝変わらないこと〟を無意識に求めることで安全を保ってきたからだ。
それは、確かな結果をもたらす保証された行動と言えるだろう。しかし、投資においては正しいとされていた共通の常識を信念としたことで、結果的に負けるための自動思考が構築されてしまうのは皮肉ではないだろうか。
生体を安定した状態に維持する機能(ホメオスタシス)のせいで勝てないと知っている人は限られている。
たとえば、競馬でマイナス収支の人は初心者の頃に身に着けた悪習が災いしているケースがほとんどだ。とくに馬券の買い目を決定する時には自動思考が働きやすい。
初心者の頃に人気馬から当てるためだけの馬券に終始していた人は、その体験が自動思考として強固に結びついており、気づかない限りムダな買い目を死ぬまで買い続けることになる。
よく安全だと思いこんでいる人が使う買い方に人気馬からの流し馬券がある。あまり検証もせずに穴目まで流した馬券の結末はレースを見るまでもない。なぜなら、確率に従い人気馬の組み合わせで決まりやすく過剰投資の分だけ負けるからだ。
こういった初歩的なミスは検証により改善できるのだが、ほとんどの人はマイナスという事実を重く受け止められずで直視できない。そのせいで延々と負け続けるだけの馬券を買い続けている人が無数に存在している。
競馬で負けるのは当たり前である。そういうシステムなのだから悲観する必要はない。でも、その現実を直視したくないというだけで必要以上に負け続けてくれる人たちが沢山いる。
競馬で1億を稼いだ人を検証したところ、こういったホメオスタシスの影響を受けていないように感じられた。まるでリスクなんて存在しなかのように大金を動かしており負けても気にする様子がない。
それは競馬は勝てる余地があるという価値に気づき、そのメリットを修練により最大化できた結果ではないだろうか。
たとえば、自動車の運転でも初心者の頃は複雑で忙しく事故を起こしそうに感じるものだが、自動思考が働くまで修練すると危険度が薄まり利便性が向上していくことで自動車が持つメリットを強く感じられるようになる。
まったく自動車を運転しない人にとって、いまだ死ぬ危険性が高い乗り物と認識しているのに対し、毎週のように自動車を運転している人ではハイリスクどころか便利であり生活の一部として機能していることも多い。
もし、危険を感じつつ運転しているのなら相当なストレスになるが、むしろ熟練のドライバーは愛車をカスタムしたり音楽をかけて運転するなど楽しんでいる。いまだにATではなくマニュアルで運転を楽しんでいる層も少なくない。
自動車の運転には、「歩行者の動き」「車間距離」「標識の確認」「ギアチェンジ」「方向指示器」など複合的な判断を一瞬のうちに求められる。それぞれの行動を思考していたら全ての動作は極端に遅くなってしまい事故につながるだろう。
そう、ここで分かることは、初心者の頃はハイリスクだと感じても経験を積むことでリスクは減少していき最終的にはリスクだと感じなくなるという事実である。
つまり、それぞれの修練度によりリスクは変化するわけだ。これは、ある人にとっては無謀に見えるハイリスクな投資が、その当事者にとっては全く安全な投資だという認識差を生み出してもいる。
あらゆるリスクは自身のホメオスタシスに対する修練度に依存することを知れば自助努力の道が開けてくる。これをチャンスと受け取れる人が成功していくことは間違いないことだろう。
- 魔法の自動思考を味方につける方法
魔法の自動思考とは、理性的で論理に矛盾がない思考のプロセスを習慣の力により身に着け自動的に行えるようにするものである。
人はプラスよりマイナス面を2倍強く感じてしまうことは【プロスペクト理論の損失回避性】にある通り。その負の連鎖を生み出さないために冷静でクリアな意識を保つことが必須となってくる。
そのために自助努力でできることを以下で取り上げていきたい。
■立ち止まる:とにかく数分でもいいから立ち止まる時間をつくろう。
かなり方向音痴な私は、知らない街で道に迷ったときは自動思考で立ち止まっている。けれども投資や予想プロセスでは、立ち止まることを習慣づけないと惰性で動いてしまえば負を呼び込むことになってしまう。
それを防ぐ最善の手立ては、少し時間を置くことである。どこかで自分の都合よく解釈していないか、自分が正しいことを前提にして動いていないか時間を置くとハッキリしやすい。
なにかの作業で煮詰まったときも昼寝をしたら解決法が思いついたという経験はないだろうか。これは幸運や奇跡ではなく、脳が情報を整理する時間を与えることで起こる確かな事象であることを知っておこう。
■落ち着く:くつろぎながらクリアな意識を保つようにする。難しければ自然な自分の呼吸に少し注意を向けておく。上手にやろうとせず気軽にやることが成功のコツだ。
心理的には感情が快適モードになることで視野が広がっていく。逆にストレス度が高いままだと理性の働きが鈍ってしまい思考が単純化してしまう。単純化とは俗に言う動物脳に支配されることであり、その時は人間らしい行動を期待することができない。
かつてパリの文人や哲学者たちは、新たな視座や思想を生み出すための場所を持っていた。現代で言えば世界の大都市のビジネス街でにぎわうスターバックスのような場所である。
昔も今も人は快適になれる空間やスペースを求めている。あちこちに飛び散っている意識が静まってきたとき、人間がより人間らしくなることを体験してきたからだろう。
■身体で感じる:息をしながら皮膚、筋肉、内臓の微細な感覚があること、ないことを味わう。
生物の起源をたどっていくと、脳の歴史は後半からはじまる。そもそも脳がなくても生物は活動しており、その身体(動き)が脳の形成に影響を及ぼしたと考えられてきた。
また神経学者のアントニオ・ダマシオによれば、人間の理性に大きく影響を及ぼす情動(一時的な激しい感情の動き)や直観の源には、内臓感覚などと呼ばれる身体的な反応があるそうだ。
身体に宿る知性=身体知を目覚めさせることが、自動思考のマイナス面を抑える手立てになる。
- 行動の責任はすべて自分にある
魔法の自動思考は速ければ3週間という短い時間で習慣化していく。ただし、続けなければ元に戻るのは早い。なぜなら、マイナス感情により行動を阻止するための自動思考が働くからだ。
本能的に人間はラクをしたいと考えている。だから、ラクに稼げるという商材に引っかかり続けるわけだ。
この実践中には余計な感情があなたを邪魔するのは想像に難くない。
「おい、こいつの言うことを信じるのか?」「こんなのデタラメだぞ!」
私も経験してきたから分かるが、それは悪魔のささやきであり耳を貸してはならない。
それを抑制するために力となるのが『行動の責任はすべて自分にある』というキラーワードだ。こう考えることで最小の投資で試して無意味だったら止めればいいと冷静に思考することができる。
このように自分の意識を変えることで、それが変化に対応する唯一の手段となり、とてつもない力を発揮する原動力となる。
たとえば、レース中に騎手の判断ミスで当たるはずだった馬券がパーになったとしよう。とるべき行動は文句を言うことではない。なぜミスしたのかを明らかにし対策できるかを考えるのである。
誰かに何かを言っても現実は変わらず未来も変えることはできないが、自分が変われば少なくとも未来を変えることができる。
そのような自動思考が習慣化されたのなら少なくとも負けは減っていくだろう。それを繰り返していく過程で何らかの利益になる発見をすることが私の経験では多かったことから新しい発見もあるはずだ。
1兆円に近い資産を持つ投資家ジョージ・ソロスはこう断言している。
「まずは生き残れ、儲けるのはそれからだ」
その利益になる“気づき”が積み重なることで利益を生み出す自動思考となって形成されていく。どのようなレースを選び買い目を決めるべきなのか真剣に悩むほど現状を変える気づきに近づけるだろう。
いずれ、表層データにはなくとも自分の強みを発揮できるレースがどれなのかリスクを感覚的に処理できるようになる。そして、その行動は、ほかの一般人からすればハイリスクなものに見えるかもしれない。
自分の思考を正しく自動化できれば、それはPYTHONで作られたプログラムよりも高度なツールとなる。最終的に人口知能を凌駕できるのは私たちの脳だと信じるべきだ。
これらの基本的な手法を使いつつ自分の潜在能力を開花させていこう。あらゆるアイデアを素早く実践し失敗を積み重ねていくことも重要である。
色々と挑戦を続けていく作業は、金庫の暗証番号を1から探す作業に似ている。ほとんどがダメでも、ある時に「カチッ」とくる気づきで状況が一変することは珍しくない。
どの偉人にも共通する真理は「成功するまで諦めず行う」というシンプルなものである。まずは、実現可能だと思う最高のビジョンを描きだそう。
そして、肩の力を抜き楽観的に人生の事業として楽しむことである。
- 現在進行形で世界を変えているイーロン・マスクの名言
イーロン・マスクは40歳にして億万長者となったイノベーターであり、映画「アイアンマン」のモデルにもなっている。
無謀だと言われたロケット事業を商業化し、自動車の自動運転でも良くも悪くも影響を与え続けてきた人物だ。
2026年までに火星へ100万人規模で人類を移住させるという大規模なビジョンを掲げ活動している。
そんな彼の才能はマネできないが、行動の指針を学びとり自分のものとすることができる。
そのヒントとなる名言を紹介して終わりにしたい。
「たぶん失敗するだろうと思ったけど、重要な事だからやることにした。」
…天才であっても成功できる、利益になると確信して行動しているわけではない。
もっと確かな信念【世界をより良いものにできる】と考えていることが行動の原動力をもたらしている。
単純に利益を求めるだけでは理想に近づくことはできないだろう。
自分だけが実現できる何かを追い求める方が絶大な価値をもたらすことにつながるようだ。
「私は息をしている限り諦めない。」
…諦めない限り負けではない、それだけでなく自分の才能をすべて発揮するという決意に思える。
今まで多くの失敗をしても「このような失敗こそ成長できるチャンスだ」とポジティブな思考に変えてきたそう。
誰もがうらやむ栄光は平坦な道の上に築かれるものではないことは確かなようだ。
「アイデアを実行することは、アイデアを思い付くより難しい」
…アイデアを持つ人は多いが実行する人は少ない。それは時間や資金が必要となるリスキーな行動だからだ。
ゆえにアイデアを実行できる人は一定の強みを持つことになる。
「『他人にとって、自分が高い価値を出せる』という自信がある分野に、自分の力を集中することが重要です。」
…不得意なことを克服することは良いことだが全体の成果としてみると平凡であることが多い。
それよりも得意分野に特化した方がイノベーションを起こしやすく実利も得やすくなる。
「失敗なんてひとつの選択肢にすぎない。失敗することがなかったら、どうしてイノベーションを起こせるだろう。」
…こう考える人は落ち込むことを時間のムダとみなす。自分の感情と向き合い「わかったわかった、私はミスをした」と早々に認める。
そうすることで素早く改善策に乗りだしタイムロスを防ぐことで技術革新のタイミングで最高の利益を引き寄せている。
そこには小さなできることから始める【ドミノ戦略】を最大限に活用していたそう。
ひとつひとつの小さなドミノ(できること)が、次にできるだけ大きなドミノを倒せるように、適切な順番でドミノを並べていくと大きな目標を達成できるとういうもの。
最初のドミノの高さはわずか5mmでも、16個以上のドミノを倒していくと20億倍のエネルギーに膨れ上がり、エンパイアステートビルを倒壊させることができてしまう。
こういった現実的な信念と理論をうまく活用していくことで、自分自身を高みへと導くことができる。自分の才能を心から信じ最高の結果を求めていこう。